カンムリワシの繁殖行動は、1月ぐらいから目立ち始めます。 特に2月3月は、電柱や林縁の木などのよく目立つ場所に止まります。 交尾や造巣行動もこの時期に行われ、河川などの湿地が近接する森林に巣を造り、 何度も交尾を行います。 主にオスが巣材を運搬し、メスが産座を整えます。 営巣木はイタジイ(宮崎 1981)、リュウキュウマツ(原戸 1987)、ガジュマルなどです。
4月上旬、メスは産卵し、抱卵を始めます。 抱卵日数は推定45日で、5月中旬にヒナが孵化します。 産卵数は不明ですが、孵化したヒナの数が1羽であるため、通常1個と思われますが、2個という報告(原戸
1987)もあります。
ヒナの孵化後は、メスが主に抱雛・給餌を行い、オスが餌の運搬・なわばりや巣の防衛を行い、概ね役割分担ができています。 7月に入り孵化後45日を過ぎる頃になると、ヒナは完全に幼綿羽から幼鳥羽に生え変わり、羽ばたき行動もよく見られ、親が運んできた餌も自力で引き裂いて食べることができるようになります。
ヒナの巣立ちは、巣の周りを枝伝いに出たり戻ったりして離れていくため、はっきりした日と特定することができませんが、7月下旬から8月上旬には営巣木から離れ、湿地などの餌場に出てきます。 この頃、幼鳥(巣立ったヒナ)は、自ら狩りを試み始めますが、成功率はまだまだ低く、たまに親鳥が餌を運んでくるのを観察することができます。
9月になると、親鳥が餌を運んでくる姿も観察できなくなるため、その頃には幼鳥はもう自立しているのかもしれません。
・佐野清貴.2003. 石垣島におけるカンムリワシの繁殖生態. Strix21:141-150
・佐野清貴.2003. シリーズ「この鳥を守ろう」の現在 カンムリワシ あやぱに〜古謡に唄われ尊ばれる私たちの自然.44(4):16-19
より、抜粋・改変
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